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    2022.9.1

    電子契約解禁!不動産取引もデジタル取引へ

    印鑑押捺の意味とは

    2020年のコロナ禍によるテレワークの普及により、電子契約システムは、益々脚光を浴びていますが、 電子契約には紙の契約書のようには印鑑が押捺されません。

    そこで印鑑を押さなくても契約の効力に影響がないのかという疑問が出てきます。

    結論から言うと八百屋さんで大根を買うときにそもそも契約書を作成しなくても売主と買主との間で売買の合意があれば売買が有効に成立するように契約の成立のためには契約書も必要なければ印鑑の押捺も必要としないのです(民法176条)。

    それでは何故契約書を作成するときに印鑑の押捺をするかというと民事訴訟法の条文、そして昭和39年の最高裁判例が大きく影響しています。

    成立の真正に争いのある文書について、印影と作成名義人の印章が一致することが立証されれば、その印影は作成名義人の意思に基づき押印されたことが推定され、更に「私文書は、本人[中略]の署名又は押印がある時は、真正に成立したものと推定する。」という、民訴法第228条第4項によりその印影に係る私文書は作成名義人の意思に基づき作成されたことが推定されるとする判例(最判昭39・5・12民集18巻4号597頁)があります。

    一段目は最高裁の考え方による推定であり、二段目は民事訴訟の規定による推定ですが、これを「二段の推定」の法理と呼ばれています。

    文書の成立の真正が裁判上争われた場合において、文書に本人の押印がありさえすれば、裁判における証明の負担が軽減されることになるということです。

    本人の印鑑であることの立証に役立つのが実印の押捺と印鑑証明書の存在です。

    しかし、この二段の推定により証明の負担が軽減される程度は、次に述べるとおり、限定的です。

    ①推定である以上、印章の盗用や冒用などにより他人がその印章を利用した可能性があるなどの反証が相手方からなされた場合には、その推定は破られ得ます。

    ②印影と作成名義人の印章が一致することの立証は、実印である場合には印鑑証明書を得ることにより一定程度容易ですが、いわゆる認印の場合には事実上困難が生じ得ると考えられます。

    また、文書の成立の真正が認められても、その文書が示す事実の基礎となる法律行為の存在や内容(例えば、請求書記載の請求額の基礎となった売買契約の成立や内容)については、その文書から直接に認められるわけではありません。このように、仮に文書に押印があることにより文書の成立の真正についての証明の負担が軽減されたとしても、そのことの裁判上の意義は、文書の性質や立証命題との関係によっても異なり得ることにも留意する必要があります。

    しかし、このような印鑑の押捺の効力について限界があるとしても印鑑の押捺がないよりある方が裁判になった場合に有利な状況になる事は間違いないので社会的には契約書等の文書には署名のほかに印鑑の押捺が求められてきたという事でしょう。

    我が国の場合、署名が本人のものであることを立証する為には最終的に筆跡鑑定が必要となります。

    まとめ

    電子契約システムは紙契約書の煩雑さを軽減し、印紙税などのコストを抑えてくれますが、一方で前述したように、認定認証事業者の場合でも暗号技術の危殆化を理由に法律上電子証明書の有効期間は5年を超えないものであることが求められていますし(同法施行規則第6条4項)、保管タイムスタンプも10年が有効期間であるとされているので、有効期限が切れた場合に備えてメールの保存、重説、契約時の録画等他の立証手段を用意しておく必要があります。

    不動産取引に関与する私たち宅建業者も契約の電子化が進む事で決して仕事がなくなるのではなく、今まで以上にデジタル契約前後のアナログ的証拠の確保として、様々な立証手段を確保しておき、それを利用することが考えられます。

    また、電子文書は紙の契約のようによく読まずに同意ボタンに飛んで同意してしまう傾向があり、実際に契約当事者が電子契約の内容をよく理解して契約していた事がわかるよう、IT重説を行う場合には契約締結前の重要事項説明時の録画化等も重要になると考えています。

    私たち宅建業者はより一層お客様に寄り添う必要があり、契約までのプロセスを今よりなお大切にしていく必要があると考えています。

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