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Column不動産相談事例
2023.3.15
一棟賃貸マンションの売買と個人情報との関係~賃借人の個人情報を提供する行為は個人情報保護法に抵触するの?~
賃借人の個人情報を提供する行為は個人情報保護法に抵触する?
私たちは不動産取引に関する様々なご相談を受けています。
その中から一般の方も不動産業者の方も参考になる事例をまとめて
皆さんにご紹介させて頂き、安全安心な不動産取引の一助になればと考え、
シリーズ化してお伝えができればと思います。今回は、一棟賃貸マンションの売買取引をする際、予め売主(貸主)から
入居者の個人情報(住戸別の賃貸借契約書の写し、契約内容の一覧表、滞納状況等)を
入手し、それを重要事項説明書に添付して、買主(新オーナー)に事前説明する事は、
賃借人の個人情報保護に抵触するか否かについて考えていきます。結論!抵触する事はありません。
結論から申し上げますと、賃借人の情報を事前に提供する行為は
個人情報保護法に抵触する事はないと考えます。
内容を詳しく見ていきましょう。売主(貸主)が保有する個人情報を、売主が直接、又は仲介業者を通じて
買主に提供するという点と、仲介業者が売主から入手して買主に提供するという
2つの点で考える必要がありますが、前者の場合には、一部の大手貸ビル業者などの場合
以外は、売主である貸主が「個人情報取扱業者」に該当するというケースは稀だと思いますので、
今回は後者にフォーカスを当て見てみましょう。仲介業者の行為は、宅建業法という「法令に基づく場合」の行為(重要事項説明)ですので、
個人情報保護法第23条第1項第1号の規定により、同法の適用除外となり、何ら問題は
あるように思いません。
又、前者のケースで、売主(貸主)自身が「個人情報取扱業者」に該当する場合であったとしても、
売主(貸主)の行為は、同条同項第2号の規定による「人(買主)の財産の保護の為に必要がある場合」
の行為に該当するので、同様に適用除外となると考えられます。※個人情報取扱事業者とは
個人情報取扱事業者とは、個人情報保護法で定められている概念で、
「個人情報データベースなどを事業の用に供している者」(個人情報保護法第2条第3項)
と定義されています。事実上、ほとんどの企業・団体・個人が含まれることになります。
(尚、平成27年の法改正により、5000人未満の個人情報を保有する小規模事業者の除外規定は廃止されました。)まとめ
個人情報保護法の制定後、個人情報の取り扱いについて、
法の趣旨を誤解した主張が見受けられます。今回のケースのように、賃貸物件の売買の場合に、
賃借人の氏名や賃貸借契約書を売主(貸主)が買主に提供する事は同法に抵触するものではありません。同法で関係する条文は同法第23条の「個人データの第三者提供の制限」ですが、
売主はその義務対象となる「個人情報取扱事業者」ではないでしょうし、
仮にその義務を負う者であったとしても、賃料の滞納状況を知らせる事は、同条の適用除外である「人の財産の保護の為に必要がある場合であって、
本人の同意を得る事が困難である時(同法第23条第1項第2号)」に該当し、
問題があるように思えません。敢えて、問題になるとすれば、賃借人の収入、信条、宗教等一般的にみて、
他人に知られたくない事実を必要性もないのに買主に告げる行為は不法行為
(民法第709条)に該当する可能性があります。賃貸物件の売買に於いて、買主が当然に知らなければならない賃借人に関する情報を
売主が買主に教えても、違法性はないと思います。【参考法令】
・個人情報保護法第23条(第三者提供の制限) -
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